GUITAR MAGAZINE 1999/MAY
Interviewer : Tomoyuki Yamazaki
エレクトロニックのアルバムが出るという噂は約2年前からありましたが、具体的に制作に取り掛かったのはいつ頃だったのですか?
JM:去年の初めかな。確かに一昨年からバーナードとはまた一緒にやろうって話してたんだ。それで去年の初めから曲を書き始めた。二人とも自宅にスタジオがあるから、それぞれアイディアをテープに録って、週に1-2回それを聴かせ合ったりね。これまでの2枚のアルバムでは二人で同時にスタジオ入りして、最初から共同作業で曲を作るというスタイルを取ってたけど、今回はどちらか片方のアイディアに二人で肉付けしていって完成させるようにした。だから曲作りに時間がかかった事は確かだね。バーナードは去年ニュー・オーダーを再始動させたから、そちらにも時間を取られてしまったし・・・。ただ、レコーディング作業は非常にスムーズに行ったよ。僕とバーナード、ジェド・リンチ(d)、ジミー・グッドウィン(b)の4人で、バンド・アルバムのような形で仕上げていったんだ。大体12週間くらいでレコーディングを終える事が出来たよ。
”トゥイステッド・テンダネス”のサウンドは過去2作と比べても最も肉体的な、ロック・アルバムっぽい仕上がりになっていますね。
JM:そうだね。以前はタイム・リミットが無かったから時間をかけすぎて、オーバー・プロデュースになってしまったんだ。そのせいで僕のギターがシンセやエフェクト、プログラミングなどに埋もれて、目立たなくなってしまっていた。新作のレコーディングはその場の生のフィーリングをダイレクトにとらえる事がテーマだったんだ。おそらく君が”ロック・アルバム”と言っているのはそんなフィーリングを指しているんだろうね。アルバムのギター・パートは殆どが1,2テイクで録られたものなんだ。朝10時にスタジオ入りして、エンジニアに”この曲のトラックを流してくれ”って頼んで、それに合わせてギターをプレイする。その中からベスト・テイクをいくつかつなげたものなのさ。ギターのみについて言えば、凄くナチュラルなアルバムに仕上がったよ。
1曲目”メイク・イット・ハプン”のイントロで、「これはポップ・アルバムではない」というラップが入り、すぐあとにワウを効かせたギターが入ってきますね。あれは「これはロック・アルバムだ」という宣言なのでしょうか?
JM:まあね(笑)。レコーディングに前後してできるだけ外界から自分自身をシャットアウトして、他人からの影響を受けない自分の音楽というものを見い出そうとしてきたんだけど、その結果がああいったギターを大々的にフィーチュアしたサウンドだったんだ。自分でも正直驚いたね。エレクトロニックを再開させる前にマリオンのアルバム”ザ・プログラム”をプロデュースしたことも、ギターへの愛を再確認するきっかけとなった。最初はシングル1曲ぐらいプロデュースするか、みたいな軽い気持ちだったんだけど、何曲かデモを聴かせてもらって、背中が壁に押し付けられるようなエネルギーに衝撃を受けてね。彼らのアグレッシブでエキサイティングなギター・ロックが僕のロック魂に火をつけたのさ(笑)。ただ、マリオンをプロデュースしなくても”トゥイステッド・テンダネス”はギター指向になってただろうね。ずっとテクノロジーに興味を持ってきたけど、最近になって初心に戻って、エレクトリック・ギターのサウンドの魅力を再認識するようになったんだ。それに僕がシンセ・アルバムを作っても誰も興味を持たないだろうし(笑)。僕自身はギター、シンセ、プログラミングなどに対するこだわりはなくて、音楽そのものを良くするためなら何でも使う方なんだけど、リスナーは僕がギターを弾くのを聴きたいらしい。だったらたっぷり弾いてやろうと思ってね。
”トゥイステッド・テンダネス”ではオールド・スタイルのロックからの影響が聴かれますね。”メイク・イット・ハプン”のギターはジミ・ヘンドリクスを思わせるものですし・・・。
JM:ジミに影響を受けてないロック・ギタリストなんて地上にいるのかな?あの曲のリフは実は15歳の時に書いたものなんだ。だからギターを始めた当時のジミからの影響がダイレクトに表れたのかも知れない。このリフはこれまでに在籍してきたすべてのバンドに試してきたんだけど、どうしても合わなかったんだ。ようやくレコーディング出来て嬉しいよ。
ブラインド・フェイス(69年、エリック・クラプトンとスティーブ・ウィンウッドが在籍したスーパー・グループ)の”キャント・ファインド・マイ・ウェイ・ホーム”をカバーしたのは、自分たちが”90年代のブラインド・フェイス”だという意思表示なのでしょうか?
JM:いや、そんなおこがましいものじゃないよ(笑)。あの曲をカバーするというアイデイアはプロデューサーのアーサー・ベイカーのおかげで浮かんだんだ。彼と一緒にレコード店に行った時、彼の薦めでブラインド・フェイスのアルバムを買ったんだけど、あの曲が耳から離れなくてね。バーナードに聴かせて、カバーすることにしたんだ。最初にエレクトロニックを”90年代のブラインド・フェイス”と言い出したのはニール・テナント(ペット・ショップ・ボーイズ)なんだ。それ以来あちこちでそう呼ばれるようになってしまった。彼らの曲をカバーしたのも偶然なんだよ。素晴らしい曲だからカバーした。それだけさ!
これまでジョニー・マーのギター・プレイには常にマイナー調の哀しみのメロディがありましたが、今回はそれが抑え気味ですね。
JM:レコーディングが楽しくて、哀しみなんて感じてる場合じゃなかったからさ(笑)。実際のところ、新作用の曲の多くがメジャー・キーだったんで、ギターもそれに合わせたものになったんだ。とは言っても僕は根っからのハッピーな人間にはなれないからね。”ヘイズ”のソロのエンディング、それから”レイト・アット・ナイト”でのワウを通したスライド・プレイはマイナーだし、”キャント・ファインド・マイ・ウェイ・ホーム”のイントロでのプレイはスミスの”ストレンジ・ウェイズ・ヒア・ウィ・カム”時代に通じるフィーリングがあるだろう?
アルバムではどんなギターを弾きましたか?
JM:64年製のギブソンSGと59年製のレス・ポール、それからギブソンES-330、グレッチ6120を弾いた。アコースティックはマーティンD-42、それからD-28の12弦。それぐらいかな。僕にしては少ない方だよ。以前は一曲を録音するのに何本も弾いたりしたけど、最近は1-2本をメインにしてる。今のメインはSGだよ。ただ、出したい音によっていろんなアンプを使ってる。マッチレスのDC/30、60年代のフェンダー・デラックス、ハイワットの20Wコンボ、63年製のアンペグ・スーパー・エコー、フェンダー・コンサート・アンプ・・・他にもいくつか使った。ギターを変えずともアンプを変えることでかなりサウンドに幅が生まれるからね。
バーナードがシンセやサンプリングであらゆる音を出せるのに対し、ギターでは基本的にギターの音しか出すことが出来ませんが、そのことに欲求不満を感じることはありませんか?
JM:スミスの末期、それからエレクトロニックの初期にはそう感じたけど、今ではその逆だね。ギターという楽器はちょっとしたタッチで繊細なフィーリングを出すことが出来る。何千万円もするシンセがなくても、指だけで感情のありったけを表現することが可能なんだ。音色には限界があっても、感情は無限だ。今はギターに凄く満足してるよ。
ところでスライド・プレイはどのくらい前からやっているのですか?
スライドを弾こうと思ったのは15歳の頃だけど、人前で弾けるようになったのはずっとあとだった。今でもスライドは難しいよ。自分が出そうとしているイントネーションを弾こうと思ったら、かなりの練習を積まなきゃならないからね。しかも僕が弾きたいのはブルーズっぽいフレーズじゃなく、もっと悲哀のあるものだから、なかなか模範となるギタリストがいなくてね。スライドで影響を受けたのはジョージ・ハリスンぐらいかな。
ライブではどんなギターを弾く予定ですか?
JM:SGとES-330、それと56年製のレス・ポール・ゴールド・トップ。エレキ・ギターはその3本だね。しばらくライブはやってないから、実際そういう話が持ち上がるまで何とも言えないけど・・・もう3年近くライブはやってないんだ。以前は緊張するから嫌いだったけど、いざやらなくなるとステージが恋しくなるものだよ。
バーナードは今年、ニュー・オーダーとしての活動が中心になるらしいですし、エレクトロニックとしてのツアーは望めそうもありませんね。
JM:ああ、だからソロ・ツアーをやろうと思ってね!
ええっ!?
JM:じゃないと日本に行けないだろ?スミスは一度もジャパン・ツアーをやらなかったし、僕が日本に行ったのはザ・ザの一員としての一度だけなんだ。それなのに今でもファン・レターを貰うし、是非日本でライブをやりたいんだよ。でも今の状況だと、そうするにはソロとしてやるしかない。おそらくみんなが予想しているよりずっと早く日本でライブを行なうことになるだろう。
ソロ・ライブはどんな構成になるのでしょう?
JM:すべて新曲だよ。スミスの曲もエレクトロニックの曲も、ザ・ザの曲もやらない。まだ公の場ではライブをやってないけど、近いうちにステージで披露出来るだろう。
ソロとしてレコーディングを行なう予定は?
JM:もちろんその意思はあるよ。どこかのレコード会社が興味さえ持ってくれれば、アルバム1枚分の新曲はあるし、すぐにでもレコーディングに取り掛かれる。ソロでは、自分でボーカルを取るつもりなんだ。これまでバック・ボーカルは取ってきたけど、そろそろリードを歌うべきときが来たと思う。僕には自分のやりたいことのビジョンがあるし、それを完全な形で実現させるには自分自身でやるしかない。ギターとボーカル両方をやるのは大変だけど、どうにかやってみるよ。
ソロの音楽性はどんなものになるのですか?
JM:スーパー・チャージド・ロックンロール!冗談なんかじゃない、本気だよ。エネルギーと緊張感に満ちた、ギター・ロックを披露するつもりさ。ジョニー・マーがロックン・ロールをプレイするなんて信じられないかい?だったらあと何ヶ月か待ってくれよ。本当だって事を日本のステージで証明するから!
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