何故今バート・ヤンシュ?

バート・ヤンシュは60年代からブリティシュ・トラッド、フォーク・ブルーズ界で活躍しているアコースティック・ギター・プレイヤーです。世間一般の認識としては、ジミー・ペイジやニール・ヤング、若者ではバーナード・バトラーやノエル・ギャラガー、そして勿論ジョニー・マーといった人気者にこよなく愛されるオールタイム・ベストプレイヤーである事といった所でしょうか(かく云う私もペイジ経由です)。まずソロでデビューし、程なくPentangleという、英国随一の超絶ジャムフォークバンドに参加、そこでジョン・レンボーン(g)やテリー・コックス(d)、ダニー・トンプソン(b)、そしてジャッキー・マクシー(v)と出会います。ペンタングルの魅力は、なんと云ってもトラッドやフォークという枠には到底収まりきらないほど多様で、インプロヴィゼーションはまさにジャズのそれに匹敵するような鬼気迫るライブ感にあります。”なんかフォークバンドの凄いの無いかニャー”など思ったら是非ペンタングルをどうぞ。

さて、近年のバート・ヤンシュに話を戻します(もう亡くなってるんでしょ?とか云っちゃだめ)。ソロ活動がメインになっても割とコンスタントにアルバムを発表したりライブ活動を行っているのですが、それが英国国内(故郷であるスコットランド含む)に限られている為、なかなか日本で彼の素晴らしいギター・プレイを拝むことは難しいようです。80年代に一度、お金持ちの某企業社長がポケットマネーで招聘し会社の秘書数人同伴でツアーに同行、なんて笑える実話もありますが、今の60歳というお年を考えても世界規模のツアーに出るのは大変難儀でありましょうから、今現在精力的にライブ活動を行っている英国内へ飛んで行くしか彼を見る手立てはありません。

ジョニーとバートとの直接的な関わりは、2000年にリリースされたバートのアルバム”Crimson Moon”から始まります。それ以前にジョニーは数々のインタビューで彼に関し、”アイディアに行き詰ったらバート・ヤンシュを聴く”、”迷った時にに立ち返る場所”という意味合いの発言をしていました。”Crimson Moon”は、ジョニーの他にバーナード・バトラーもメインで参加しており、バートの膨大なバックカタログの中では良い意味で健康的でカラフルでロックしている、少々異色なアルバムであると云えるかもしれません。そんな二人が初めて同じステージに立ったのは同年に収録されたBBCのTVプログラム"Later With Jools"(通称:ジュールズ倶楽部)で、曲は”River Bank”、バート、バーナード、ジョニーの三人でのギターアンサンブル演奏でした。他共演バンド(ルー・リード、ケリスやアル・ジャロウ、ブロードキャスト、MJコール等)らからは完全に浮いており、特にジョニーの仏頂面に大笑いしたものですが、元々彼は緊張癖がありますので、それが極限に達してしまったからかも知れません。三人の演奏は始終快いテンションで素晴らしいものでしたが、この奇跡のトリオが顔を揃えて演奏する日が2003年10月と11月に再び訪れるのです。

2003年はバート・ヤンシュの還暦を祝うコンサートが二度開催されました。10月24日にはBBC放送用のスタジオ収録、そして11月8日にはクイーン・エリザベス・ホールでの60th Birthday Cerebrationsコンサートです。ジョニーとバーナードの他、豪華共演者陣もズラリと顔を揃え(ペンタングルのシンガーであるジャッキー・マクシー、ラルフ・マクテルやジョニー・ホッジ、元マイブラのコルム・オコーサクやマジー・スターのホープ・サンドヴァルなど)チケットは勿論ソールド・アウト、会場はいい塩梅に頭の禿げあがったお年寄りで大いに盛り上がったようです。この公演を見逃してしまった事は、私史上最大のしくじりのひとつです。

最後になりましたが、バート・ヤンシュの音楽の最大の特徴は”飽くまでもブリティッシュ・トラディショナル”であるという事でしょう。ペンタングルでは一緒に一時代を築いたジョン・レンボーンなどは多民族な要素を取り入れていましたが、バートは英国伝承音楽一辺倒です。まさに民謡、フォークロアの世界を地で行っています。とは云え、幅広いアレンジ力と永久普遍にしてオリジナル、そしていづれ衰えぬギター演奏技術はクラシック奏者にも匹敵するものであり、他の追随を許しません。願わくは、ジョニーも60歳を超えてもかく在って欲しい、そんな気持ちにさせられます。今だからこそ、私は声を大にして云います。

今だからこそ、バート・ヤンシュ、と。


バート・ヤンシュ関連リンク

バート・ヤンシュ・オフィシャルサイト /*バート公式サイトです。ディスコグラフィーやギグの予定もバッチリチェック。*/

Guitarist2月号/2004 /*ジョニーがバートについて思う存分喋りまくった最新インタビュー。*/

アコースティック・ギター・マガジン2000年10月号 /*バート、ジョニー、バーナード・バトラーのインタビュー。*/

バート・ヤンシュとバーナード・バトラーを観に行く旅 /*わたくしMAKIOのグラスゴー旅日記。*/

バートとジョニーが三度共演したMeltdown2005/US-UK Folk Connectionスペシャル・ページ */(Jul.6/2005)

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2004年5月23日MAKIO