公演日程とセットリスト2008年04月08日 大阪
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2007年サマーソニックでの来日から8ヶ月、ようやく単独日本公演が実現した。ジョニーはとうとうモデストマウスのメンバーとして、二度目の来日を果たした事になる。すなわちこの同一バンドでの複数来日はジョニー初の快挙となった。現在も続く”モデストマウス時代”を心の底から好いている私にとって、”モデストマウスBC−ADモデストマウス”などとジョニーヒストリーの章を区切って考えたりもしているくらいである。
前回の来日でもそうだったが、今回も私は彼らのショウを観るにつけ、またしても大きな衝撃を受けた。鈍器で殴打されたように、しょっぱなから頭がぐらぐらして正気を保つのが困難であった。それほどに、一発目から私はまともに”くらって”しまったのである。東京2日間を鑑賞したが今回は個人的に10日の方が盛り上がったと記憶しているので、こちらのレポートをメインにお送りしたい。
1曲目は意表をつく”Satin In A Coffin”だった。アイザックは喉の調子が悪いらしく、9日はかなり苦戦しており、ジョニーのコーラスパートが必然的に増えていた。少しでも復調してくれれば・・・と願っていたが、10日はかなり声が出ており、曲毎に良くなっていき、表現力も戻っている。4曲目の”Dashboard”では2本のマイクを使い分け、サルガッソーを行く悪運の船長を演じた。自慢の帽子は既に脱げてしまっていた。
ジョニーの今回のギター・ギアは合計5本。白と銀のジャズマスター2本とメイプルシール、ラメ茶と白ツートンカラーのジャギュアー2本、そして黒のテレキャスである。アンプにはチベット亡命政府の雪山獅子旗を掲げ、胸にはチベットコインのペンダントをしていた(のちに、彼もチベットの状況を憂いており彼自身の問題への取り組みを語ったそうである)。9日は機材トラブルも多く音のバランスも最後まで悪いままだったが、10日はほぼ改善されていてホッとした。5曲目の”Fire It Up”では、ジョニー特有の澄み切った美しい旋律を会場全体に響き渡らせ、大きな少年少女の瞳をきらきらと輝かせていた。”Tiny Cities”に曲が進むと、一瞬にして全体に緊張が走った。今回の”Tiny Cities”はサマソニ時よりも幾分プログレ度が薄れ、あの酩酊するようなドローン感の代わりに、短い時間に全ての展開を封じ込めようとしているように感じた。結果、テンションを落とすことなく狂熱のうちにオーディエンスを異世界にいざない、興奮のボルテージをマックスまで引き上げていた。しかもこの曲のジョニーのフレージングやアウトロは毎回趣が異なっていて全く飽くことがない。
7曲目、8曲目は日本初披露の”Trailer Trash”と”Here It Comes”である。この2曲でのジョニーのギターはフォーキーで素朴な味わいである。アイザックの囁くような優しいボーカルスタイルも相まって、前曲"Tiny Cities”での最高潮まで達した興奮を牧歌的な優しい演奏で静かに落ち着けることに成功した。この流れは完璧だったが、ジョニーが、”ゆうべも来た人居る?これ新曲ね”と云っていた。”Here It Comes”は新曲じゃないよ、ジョニー・・・(それに9日も演ったよ)。9曲目の”Fly Trapped In A Jar”と、この”Here It Comes”は蠅のBuzzyな音(勿論ギターです)が繋がっていて、世界観の継続がスムースに行われていた。”Fly”は”WWDBTSES"で私が最も好きなジョニーのプレイであり、邦訳をした際、一番楽しかった曲でもある。特にアイザックとのユニゾン演奏を生で聴くことを常に熱望してやまず、殊更に思い入れのあるこの曲だ。そのようなお気に入りの曲を最高の演出と演奏で聴くことが出来て本当に嬉しかった。10曲目の”Doin' The Cockroach”でもジョニーは何ひとつ出し惜しむ事なく思い切り弾きまくっているのだが、ドラマチックなムード感と陶酔は微塵も失われていないのである。11曲目の”Float On”では勿論、オーディエンスが一体となっての合唱だ。そして、この幸福な時間がいつまでも続きますように、と願わないものは誰一人として居なかったろう。
12曲目”Bukowski”ではアイザックのバンジョーとエリックさんのアコーディオン演奏に心を奪われる。エリックさんは今回オルガンなども担当していて手も足も忙しそうだったが、こちらに向けられる笑顔は暖かく多くのファンを和ませた(エリックさんは基本ベースプレイヤーなのだが、コンピューターや数々の弦楽器を操るトムさんといい、なんともマルチで芸達者な方である)。13曲目、”Education"の時点では、アイザックの声はほぼシャウトしていた。続く”The View”もお客さんの合唱が凄まじい曲である。ここまで来ると、アイザックやコーラス連、オーディエンスの共演、まさに会場一体となって作り上げたショウであると云って過言ではない。
アイザックのお召し替えの後には、残すところあと・・・・・
熱にうかされた中にも、ふと寂しさが襲う。アンコールは”Bury Me With It"、”We've Got Everything"、ラスト”King Rat”を締めに持ってきた。計17曲、まさに全力疾走の1時間15分は、あまりにも短く儚い一瞬のようである。
個人的なハイライトは小気味の良く跳ね回るようなジョニーのギターに胸躍った2曲目の"Paper Thin Walls”、そしてリリース時から取り憑かれたように聴いた大好きな曲”King Rat”、9日の”Spitting Venom”、”Broke"だろうか。"King Rat"は、格差社会の底辺をペソスに描き出し物悲しく歌い紡ぐアイザックの歌唱と、そのたどたどしい歩みをなぞるジョニーの伴奏は、見えない手によって深い水底に引きずり込まれるような感覚に陥った。”Spitting Venom”では恥ずかしながら涙が溢れそうになってしまった。これほどに胸に来る(心をえぐられる)歌が他にあるか?!(いや、ない。この曲のみのレビューで私は原稿用紙20枚でも書けるよ)"Broke”も10日には演奏されなかったが、静寂と孤独、空虚感で胸が締め付けられるような切なさを持つ曲で、これもまた紛れもなくモデストマウスを特徴づける代表的な曲である。
今回の来日公演で私が強く思ったことは、最早モデストマウスは”モデストマウスwithマー”という表現が不可能であるという事だった。ジョニーが加入して3年近く経とうという今、完全にモデストマウスというバンドはジョニーを血肉としてしまったのだ。誰が何と云おうと、この事実は変えられやしないのだ。ここへきて、私はモデストマウスの”ジョニー・マー以前”の年月を、”ジョニー・マー以降”が追い抜くであろうと確信している。
ジョニー・マーのモデストマウスのチャプターは膨大なページ数を割くことになるだろう。それだけは間違いない。
APR.20,2008 MAKIO